無楽斎の極小右記

日々の雑感や読んだ本のこと、また西荻窪 をメインとした杉並区とその周辺の街歩き情報を中心にアップします。

タグ:国家の品格

週刊新潮に「管見妄語」なるコラムを連載中の藤原正彦センセ、かつて「国家の品格」という、200万部をはるかに越えるベストセラーを出版されている数学者であります。

国家の品格という本はどんなものかって一言でいうと、専門家(例えば経済)から見れば噴飯ものの内容で、自分の専門外のことについては、保守(本物の、ではなくて、いわゆる自称のですよ、当然)の主張を信じ込んでそのまま書いているという粗雑な内容で当時読書家からは馬鹿にされたものだった。

まぁそれはよろしい。
今回、このコラムで彼は、「今日、我が国をミスリードしてきた政治家、官僚、評論家、エコノミストなどが、責任をとり出処進退のけじめをつけるどころか、ケロリとして地位についたり発言し続けたりしている。」と書いている。
滑稽である。自分の胸に手をあてて良く考えてみよ。
まず隗より始めよ、である。

さて、藤原正彦センセ、かつて恥ずかしい本の翻訳をしたことがあるんだけど、皆さんはご存知だろうか。
その本は「月の魔力」(アーノルド・L.リーバー)1984.7
いわゆる疑似科学本ですね。数学者が堂々と?疑似科学本の翻訳をなさったのだ。
その増補版として1996.10に再び刊行、更に普及版が2010.12に刊行されている。

翻訳者は藤原正彦センセとその奥方。
何故だか(笑)、2010年の普及版では藤原センセの名前が抜けている。
「国家の品格」が発行されたあとであるだけに、さすがにマズいと考えたのだろう。
堂々と名前を出しているのならば、それはそれで良いのだけど、こっそりと隠蔽するのはねぇ。どういう品格をお持ちになっているのだろうと。

「銃・病原菌・鉄」  (ジャレド・ダイアモンド)

    原著が出版されたのは、確か1997年、本書の邦訳の単行本が出版されたのは2000年である。

    出版当時から、質の高さは話題になっていたが、ハードカバー版は高価だったし、名著だから絶版になることはないと考え、金の余裕がある時に買うつもりで、ずっと放置していた。草思社というマイナー出版社であるにもかかわらず、嬉しいことに文庫化され、書店でも売れ行きが良いようだ。

    内容は敢えて書かない。約15年ほど前に記されたものなので、最新の研究結果からすると古い部分が散見されるが、本書の欠点とするほどのものではない。是非買って読んでいただきたいし、お金を払って読むだけの価値はあるはずだ。

    一つだけ記しておきたいのは、日本には、著者のようにいくつかのジャンルを横断した“スーパー知識人”がほとんどいないのだなということ。もちろんそれは理系だけではなく、文系にも当てはまる。
例えば、日本の「論壇誌」に掲載される文章。ジャンルを横断どころか、何じゃこりゃ!!!!、という失笑レベル、素人レベルのものが平気で掲載されている。ソーカル事件どころの話ではない。

    いかん、ついつい脱線してしまった。
本書は、ハードカバー版も良く売れたんだけど、いわゆるベストセラー本は、本書のように質の高いものと、「国家の品格」(藤原正彦)のような駄本との二種類に分かれる(と、こっそり悪口を書いておく)。計算したことはないので、ざっくりとした感覚なんだけれども、ベストセラーとなる本のうち、良書は恐らく1%にも満たないのではないだろうか?
せっかく金を出して買うのだから、本の選択には要注意である。

(追記)

山形浩生氏のサイトに、2005年版追加章について色々の記事が
あるので、併せて参照していただきたい。

http://cruel.org/diamond/GGSaddition.html



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