無楽斎の極小右記

日々の雑感や読んだ本のこと、また西荻窪 をメインとした杉並区とその周辺の街歩き情報を中心にアップします。

タグ:健康食品

以前の記事

http://murakusai.doorblog.jp/archives/20019084.html

で批判した太田成男さんからご丁寧なご指摘があった。
実にありがたいことで、謝辞を申し上げたい。

もう一度ここに再録します。

「ご指摘ありがとうございます。
 講演するときは相手を考えてすべきです。一般の方を対象とするときと、科学的知識が豊富で十分判断力がある方々を対象とするときは自ずから言い方も内容も異なります。ミトコンドリア病患者家族の会では、毎年2回勉強会をしており、会員は科学的な知識と判断力は信頼できるまでに達しています。また、ミトコンドリア病は治療薬として認可されているものは皆無であり、科学的根拠が不十分でも副作用が少ない物は情報発信すべきであると考えています。私の講演が軽卒というなら、患者さんのために何もすべきでないということになってしまいます。また、私は患者家族の会の顧問です。各々の場合毎に判断しなければならないことが多く、全部をひっくるめて同じような対応はすべきでないと思います。講演会では、クロレラの副作用については話さなかったので、追加の情報と今回のブログで情報発信しました。
 水素に関しては、英文の学術論文が250報も出版されています。動物実験だけでなく、患者さんへの効果についても論文が多数出版されています。学会レベルでは、私は数多くの学会へ招待されて講演をしてますし、水素の効果の研究が学会長賞を受賞するなど高く評価されています。最近は、慶応義塾大学からの公式プレスリリースされています。さらに、最近の高名な国際科学誌の総説では、「この5年間で水素治療は最も魅力的な治療テクノロジー」と紹介されています。
 社会に対しても正しい情報を発信していく予定ですので、よろしくお願いします。
日本医科大学 太田成男」

大変ありがたいご指摘なのだが、いろんな疑念が更に浮かんできたのだ。
まずは水素水について。

私は水素水に関する論文が多数出版されているということは知らなかった。ご教示ありがとうございました。

さて、そうなると別の疑問が浮かんでくる。
「動物実験だけでなく、患者さんへの効果についても論文が多数出版されて」いるのであれば、何故医薬品として販売しないのだろうかという疑問だ。
世の中には、例えば“お茶のカテキンが癌の予防に効果がある”といったような健康食品食材に関する「研究」が数多く行われている。しかしながら、そのほとんどが、その後新薬の材料として用いられることもなく、いわゆる健康食品業界のPRに利用されるだけの結果となっている。

「水素水」はこれら他の“健康食品食材”とは違うレベルでの効果が実証されているのだろうか。もしそうであるなら、週刊誌の怪しげな“健康食品愛用者の声”的な記事ではなく、きちんとした研究結果を引用した著書をお書きいただきたい。その方が割高な製品を消費者が購入することもなく、医学会への貢献にもなるのではなかろうか。
もう一つ、残業ながら今回言及していただけなかったが「体内の活性酸素が水素と化学反応して水になる」というのは本当なのだろうか?実験で確かめられたことなのだろうか?


次に、クロレラの件。

私が記事を書くきっかけとなった太田さんのブログの記事も、全文引用します。

「クロレラを摂取するときに気をつけること(2012.10.9)
 先週末9月7日は、大阪でのミトコンドリア病患者家族の会で講演してきました。90分間のちょっと長い講演でしたが、皆さんたいへん熱心に聞いてくださいました。また、多くの方がこのブログを見ていてくださっている事がわかり驚きました。
クロレラ(クロレラ工業のクロレラがお勧め)を筋肉は細くなったマウスに与えると改善したので、健康食品として定着しているクロレラはミトコンドリア病の改善にも期待できるという話をしました。このことについて、クロレラの副作用はないのかとの質問がありました。クロレラには、ビタミンKが豊富に含まれていて、ワルファリンなど抗血液凝固薬の作用を低下させますので、抗血液凝固薬をつかっている場合は気をつけてください(たぶん、そのような例は少ないとおもいますが・・・)。」


クロレラというのは、ある意味、「健康食品の王様」のようなもので、多数の病気に対して効能があると錯覚させる方法(当然薬事法等に抵触する)で数多くの社会問題となってきた「食品」である。
太田さんは、マウスの実験結果のみを根拠に、ミトコンドリア病患者家族会の方に対して「クロレラはミトコンドリア病の改善にも期待できるという話を」されている。ミトコンドリア病には治療薬がないので、科学的な根拠が不十分でも紹介された、とのことで、それはそれで一つの見識である(私自身は科学的根拠に乏しいことについては安易に紹介すべきではないという立場であり、ここが噛み合わないと話は平行線を辿ることになるでしょうから、ここでは敢えて言及しません。)。

しかし、今回の講演での説明については疑問を感じざるを得ない。
特にワルファリンの件。
ワルファリン服用者はビタミンKを多く含むクロレラや納豆を摂取することを禁じられている。私は医師でも医学関係者でもないが、それぐらいのことは知っているのだけれど、太田さんは、講演会でクロレラについて話をすることが予めわかっていながら、何故副作用について調べなかったのだろう?
私はこういうところが(失礼ではありますが)軽率だと思うのだ。
またこれ以外にもクロレラについては多くの副作用が報告されている(後で引用します)のだが、それらについては言及されたのだろうか。

もし、私がクロレラについて話をするならば、以下のことには必ず言及する。

◯ワルファリン服用者は摂取厳禁。

◯市販の健康食品は主成分の他に、健康に良くないもの、他の薬品の効き目に影響を与えるものが含まれている可能性がある。薬ではないため、どういう方法で生産されているかも、何が使用されているかも開示が不十分である。

◯マウスでの実験結果しかないため、人間にとって必要な摂取量が分かっていない。人間には1日1kgの摂取が必要であるとなった場合、通常の健康食品の摂取では少なすぎて効果は無いだろうし、逆に多量にクロレラを摂取することで、別の健康被害が発生する可能性がある。

◯健康食品のみを偏食してはいけない。

◯販売会社によっては、薬事法に触れたり、マルチ紛いの営業をするなどの問題企業が少なくない。また、患者の弱みに付け込むような業者もいるので注意すること。

◯製造原価と比較すると、一般的には値段が高すぎる。

◯摂取するにあたり、必ず主治医に相談すること。

◯クロレラには様々な副作用がある。


副作用については、長いですが、以下、国立健康・栄養研究所「健康食品の素材情報データベース」より引用します。


「・通常の食品として摂取する場合には安全性が示唆されているが、他の使用法では安全性に関して十分な情報がない (64) 。
・妊娠中・授乳中の摂取に関しては、安全性に関して十分な情報がないため、使用を避ける (64) 。
・副作用としては、下痢、疝痛、鼓腸 (ガス) 、吐き気、光過敏症が知られている (64) 。喘息やアナフィラキシーなどアレルギー症状も報告されている (64) 。
・クロレラ加工品には、クロロフィルの分解産物で光過敏症 (皮膚障害) の原因となるフェオホルバイドが含まれることがあり、厚生労働省から「フェオホルバイド等クロロフィル分解物を含有するクロレラによる衛生上の危害防止について (昭和56年5月8日環食第99号)」という通知が出されている。
・C型慢性肝炎の患者は鉄過剰を起こしやすいことから鉄制限食療法が実施されるが、クロレラの製品には鉄を多量に含有するものがあり、注意が必要であるという報告がある(PMID:17048058) 。
・クロレラ含有製品摂取との関係が疑われる健康被害が報告されている。
1) 44~71歳5名 (男性1名、女性4名、日本) がクロレラ錠を15~50錠/日、3週間~1年間 (1例は摂取量不明) 摂取した後に、顔や手の甲に発疹や紅斑、浮腫が出現し、クロレラによる光過敏症と診断された (PMID:6735553) 。
2) 昭和51~55年の邦文6皮膚科雑誌から薬疹報告192例を集め分析したところ、光線過敏症薬疹46例中クロレラによるものが14例あった (1983263758) 。
3) 静岡県内の皮膚科医34病院を対象としたアンケート調査で、クロレラが光線過敏症の原因として多数あげられた (1997002387) 。
4) 75歳男性がクロレラ製品3種を1年間摂取し、皮脂欠乏性湿疹の悪化、嘔気、食欲低下を示した (2004276898) 。
5) アトピー性皮膚炎の既往歴のある17歳男性がクロレラエキス錠を30錠/日、1ヶ月間、クロレラエキスを30 mL/日、2ヶ月間服用したところ、肝機能障害を伴う皮疹の悪化と診断された (1998086482) 。
6) 68歳女性がクロレラ錠を摂取し、紅斑・丘疹型の皮疹が出現した(1998086482)。
7) スギ花粉症のある67歳女性が、内服していたクロレラによる発疹が出現、扁平苔癬と診断された (1999102794) 。
8) 74歳男性がクロレラ製剤の服用により、発熱と肝機能異常を認め、肝機能障害と診断された (1999231962) 。
9) 熱性痙攣の既往症のある9歳男児が、市販クロレラ食品を2ヶ月間摂取し、急性肝不全を発症した (1998065096) 。
10) 15歳女性が、全身倦怠感、嘔気、眼球粘膜の黄染、黄疸、肝障害を認め、内服していたクロレラによる急性肝炎と診断された (2005222152) 。
11) 職業的にクロレラに数週間程度暴露されていた44歳女性が、鼻炎や咳、痰、息切れ、喘鳴などの症状を呈し、クロレラによる職業性喘息と診断された (PMID:7972986) 。
・クロレラおよびスピルナを主成分とする製品から鉛 (0.07~0.75 ppm) 又はカドミウム(0.08~0.16 ppm) 、アルミニウム (1.27~6.77 mg/g) 、鉄 (291~959 ppm) 、マンガン (19.6~168 ppm) が検出されたという報告がある (1999118171) (1991097390) 。」



太田さんは「ミトコンドリア病患者家族の会では、毎年2回勉強会をしており、会員は科学的な知識と判断力は信頼できるまでに達しています。」と仰られていますが、年2回程度の勉強会で果たして科学的な知識や判断力が得られるのだろうか。
会員さんが受けられてきた教育、科学的リテラシーなどバラバラなのに、年2回の勉強会への参加だけで「科学的な知識」が果たして得られるのか。私は疑問である。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/09/kekka1.html

国民医療費も、人口一人当たり国民医療費も増加傾向に歯止めが効かない。

テレビや週刊誌、ネットなどで過剰に広告されている健康食品については以前にも取り上げたかもしれないが、こんなもの、単なる食品扱いのもので、どれだけ摂取したところで健康になるわけではないことは、近年の医療費の高騰で間接的に説明がつく。
あえて商品名を書いてしまうが、皇潤だろうがセサミンだろうが、どれだけ摂取したところで健康に良いわけではない。薬じゃないからね。もし仮にあなたが摂取して健康に良いと感じたならば、それは錯覚である。
もし、健康食品が自分には効き目があると考えている人がいるんだったら、公的医療保険制度から脱退していただいて、病院にかかる際には是非とも全額自己負担でお願いしたいものである。


不況下でもミリオンセラーを生み出す幻冬舎の強さの秘密…?

http://blogos.com/article/46086/

なのだそうだ。
例によってリンクが切れるといけないので引用しよう。


『出版関係者なら知らない人はいない「幻冬舎」。創立から18年間で15冊ものミリオンセラーを世に送り出している出版社です。10万部売れればベストセラーと言われる出版業界で、なぜ幻冬舎は100万部のミリオンセラーをたくさん生み出せるのでしょうか?その強さは、幻冬舎の社長である見城徹さんの出版に対する考え方から強さの秘密を探してみました。
■売れたものを徹底分析
出版の世界では、よくベストセラーになった本を、
「あんなくだらない本、売れてもしょうがない」
と言う人がいます。でも、こうぼやいてばかりでは、自分が作った本が売れないことの、負け惜しみにしか聞こえません。売れたものは、リスベクトしましょう。ヒットしたもの、ブームになったものは「すべて正しい」と思っていなければ、本当の意味でビジネスに向かっていくことはできないと見城さんは言います。人よりも高いところに立ち、大衆を見下し、傲慢な姿勢をとっている限り、ヒット作は作れないのです。
ヒットしている商品やブームになったものがあれば、見城さんはいつもそれを自分なりに分析しています。考えても、わからないこともありますが、それでも否定してはいけないのです。そこには自分が知らない価値が存在しているからです。自分がそれを面白いと思うかどうかは、単なる主観ですが、売れたことは、動かない現実なのです。現実は、必ず主観に勝るのです。
ヒットしたものを前にすると、「自分の作った本のほうが面白いのに」「自社の製品のほうが優れているのに」と考えてしまいがちですが、。まずは、そうした無意味な自己肯定を捨てましょう。ビジネスマンは、「売れる」という厳粛な事実に対して、どこまでも謙虚にならなければならないのです。ヒットに通じる道の入り口は、売れた商品にしかないのです。
■新しいアイデアを探す
見城さんは、休日によく街を散歩するそうです。街には、いつも新しい発見や刺激が満ちているからです。一番面白いのは、やはり看板です。化粧品、新しくリリースされたCD、風俗店……など、それらに関係する人たちが、すべて何かを売ろうとして、懸命になっています。そこには、如実に「今」が表れています。見城さんは街からも絶えず新しいアイデアを探しているのです。』

    何故この記事を取り上げたか?実は単なる偶然。たまたま手元にあった古新聞に、『がんと補完医療』という幻冬舎ルネッサンス社刊の広告が掲載されていたからだ。
   この本、説明するまでもないが、いわゆる健康食品(この場合はマイタケ)を摂取すればがんの予防に役に立ちますよと、違法行為スレスレの表現で本にした、三流出版社が刊行する詐欺紛いの書籍である。一流出版社なら、不況下でも手に出さないジャンルであろう。いつ行政処分されるかわからないからね。

    なんか虚しいですね。詐欺紛いの書籍の出版を一方でしておきながら、「ミリオンセラー」を誇るって。

このページのトップヘ